学生時代のことだった。
大事な試合の場面で、私は雰囲気にのまれ、本来の力を発揮できなかった。
身体は動いているのに、心が追いつかない。
その悔しさだけが強く残り、「自分のポテンシャルを出し切るには、どうすればいいのだろう」と問い続けることになった。
やがて私はマインドフルネスに出会った。
呼吸に意識を向け、雑念に気づき、それをそっと手放す練習。
単純な繰り返しに思えたが、2年以上続けるうちに少しずつ「自分を客観的に眺める感覚」が育っていった。
昔の戦略家が言った「敵を知るには、まず己から」という言葉が、ようやく身に落ちた瞬間だった。
いま私たちの前には生成AIという新しい道具が現れている。
それは文章をまとめ、知識を結び、アイデアを広げてくれる。
ときには、自分では気づかなかった視点までも示してくれる。
ただし、その力に全部を預けてしまえば、自分の思考は痩せ細ってしまう。
逆に、上手に向き合えば、自分の思考を広げ、未来を描く助けになる。
生成AIは、それほど高次元の道具なのだ。
ここで必要なのが、メタ認知である。
問いを立てる前に「私はいま何を求めているのか?」と自分に問いかける。
答えを受け取ったあとに「これはそのまま使うのか、自分の言葉に組み直すのか?」と立ち止まる。
マインドフルネスで培ったその習慣が、AIとの対話にも役立っている。
おかげでアイデアを形にする力も、中長期の計画を立てる力も、以前より確かに高まった。
思えば私は、学生時代に「自分のポテンシャルを発揮できなかった」経験から、この学びを始めた。
そして今は、同じ問いを、生成AIに向けている。
どうすれば、この道具のポテンシャルを引き出せるのか。
それはまだ、誰も正解を知らない。
けれど一つだけ確かに言えるのは、己を知り、自分の思考を見つめ直すことが、その第一歩になるということだ。
未来の子供たちへ。
これからの世代は、私たち以上にAIと共に育っていくだろう。
でも、AIが未来を決めるわけじゃない。
未来をつくるのは、それを手にする人の態度だ。
生成AIは、自分の引き出し(可能性)を開いてくれるような存在だ。
そこに依存を映すのか、拡張を映すのか。
その引き出しをどう使うかは、きっと君自身に委ねられている。
※本記事は筆者の実体験を中心に構成しています。
