はじめに:舞台に上がる瞬間のドキドキ感
私が初めて「感性」を自分のビジネスの舞台に上げたのは、まさに心臓がバクバクした瞬間でした。それまで私は、無形資産について頭では理解していました。ブランド価値や人的資本、知的財産権といった言葉は知っていたし、それらが重要だということも分かっていました。
でも、それらは全て「客席から眺めている」だけの存在でした。
ところが、ある日、私は気づいたのです。これらの無形資産は全て、誰かの「感性」から生まれたものだということに。そして、その「感性」という役者を、私は自分の舞台に上げたことがなかったということに。
インタンジブルとインタンジブルズ:「s」一文字で変わる世界
「インタンジブル(Intangible)」と「インタンジブルズ(Intangibles)」。一般的には単数形と複数形の違いですが、この記事では私独自の解釈として「無形資産という役者」のメタファーを使って、もっと深い違いを探ってみます。
インタンジブルは、客席から舞台を眺めている状態です。無形資産について知識として理解している段階。「ブランド価値って大切らしい」「人的資本が重要だと聞いた」という、他人事としての認識です。
インタンジブルズは、その役者たちが実際に自分の舞台に上がった状態です。無形資産が具体的な価値として機能し始める瞬間。責任が生まれ、結果が問われる自分事になった瞬間です。
「s」という一文字の違いが、他人事と自分事を分ける境界線かもしれません。
客席で待つ役者たち:現在のインタンジブルズ
現在、ビジネスの世界で認識されているインタンジブルズには、こんな役者たちがいます:
人的資本系の役者たち
- 従業員のスキルや才能
- 知識や経験
- リーダーシップ能力
技術・知財系の役者たち
- 特許権や商標
- 研究開発の成果
- 技術的ノウハウ
組織・文化系の役者たち
- 企業文化
- チームワーク
- 組織のレピュテーション
市場・関係性の役者たち
- ブランド価値
- 顧客との関係性
- 信頼関係
これらの役者たちは確かに重要です。多くの企業が、これらを舞台に上げることで価値を創造しています。
でも、私は気づいたのです。これらは全て「結果」だということに。
感性という新しい役者のご登場
全ての無形資産には、重要な源泉の一つがあります。それは人間の「感性」です。
技術革新も、ブランドの魅力も、組織文化も、顧客との信頼関係も…多くは誰かの感性から生まれました。感性という役者が過去に舞台で演じた結果が、今私たちが「インタンジブルズ」と呼んでいるものたちの多くなのです。
でも不思議なことに、多くの企業は結果だけを見て、源泉である「感性」を舞台に上げることを見落としがちです。
私は考えました。もし「感性」という役者を舞台に上げたら、どんなことが起こるだろうか?
感性は測定が困難です。数値化しにくく、管理も簡単ではありません。でも、多くの創造はここから始まります。感性の余白から、まだ誰も見たことのない価値が生まれるのです。
感性という役者のご登場です(拍手~)
これからの時代に必要な真のインタンジブルズ
AIが発達し、多くの業務が自動化される時代において、人間にしかできないことは何でしょうか?それは「感じること」「創造すること」です。
感性は、これからの時代の最も重要な無形資産の一つかもしれません。なぜなら、感性こそが新しい価値を生み出す重要な源泉だからです。
既存のインタンジブルズは、過去の成功体験の蓄積です。でも感性は、未来への扉を開く鍵なのです。
あなたの感性を舞台へ
あなたの会社には、まだ舞台に上がっていない感性という役者がいませんか?
従業員一人ひとりの感性、お客様との関係で生まれる感性、商品やサービスに込められた感性…これらを舞台に上げることで、まったく新しい価値が生まれるかもしれません。
感性の余白から生まれる価値創造。それは、真似のできない、あなたならではの競争優位性になるのです。
インタンジブルからインタンジブルズへの転換。それは知識から行動への変化です。感性という最も重要な役者を、あなたの舞台に迎え入れることなのです。
まずは明日、あなたの仕事の中で「なんとなく気になること」に5分だけ時間を割いてみてください。その「なんとなく」こそが、感性という役者からの最初の呼びかけかもしれません。
さあ、感性という役者に、盛大な拍手を送りましょう。